平井 新一

2018年7月3日2 分

お客様の「ありがとう」を集めることが、最強の戦略に変わる

ご存じの方も多いかと思いますが、最近、カーディーラーでは、新車販売時に車検・点検等のメンテナンスパックをセットで販売する取組みが定着していますよね。この流れの背景にはVC(バリューチェーン)を強化していこうという流れがあるんです。「VC?のど飴?」なんていう方はいないと思いますが、わかりやすくいうと、各企業のさまざまなセクションが持っている価値をつないで、ひとつの大きな価値としてお客様に提供し、「ありがとう」という言葉を集めていくための戦略……みたいな感じです。今後、残クレやカーリースも広がって、メンテナンス入庫も増加すれば、お客様とのタッチポイントも確実に増えていきます。「ありがとう」が集まるということは、「お客様に選ばれるための価値が高い」ということでもあるので、こうした戦略が重要視されているというわけです。
 
 実際に、メンテナンスパックは通常半年に一度ペースが一般的ですが、やる気のあるカーディーラーでは洗車を中心としたカーケアメニューを強化して、来店ペースを早めていく仕組みをつくっています。因みに、このメンテナンスパックで行われる洗車は、点検・整備のついでに提供する「おまけの洗車」ではありません。なぜなら、「おまけ」レベルでは、お客様からの「ありがとう」を引き出すことは難しくなっているからです。
 
 こうした「ありがとう」を集める戦略はカーディーラーだけのものじゃありません。とある整備工場では、来店客全員を対象に「無料洗車」を続けています。しかも、「おまけ」以上のクオリティで、です。「それは単なるボランディアなのでは……」と、思われるかもしれませんが、口コミと紹介でお客様の広がり、無料洗車をスタートして5年で、売上は3倍になっているとのこと。
 
 この成果の裏側には、「返報性の原理」という心理学の考え方があります。「返報性の原理」とは、「人は他人から何らかの奉仕を受けたとき、お返しをしないと申し訳ないと感じる」というものです。もちろん、この「返報性の原理」につけ込むべし!いうことではありませんが、お客様から、「いつも悪いね」「ありがとう」などの言葉を引き出していければ、自然と「返報」したいと感じるファンが増えていきます。重要なのは、「お客様からその言葉を引き出せる商品やサービスは何なのか?」を考えることです。「愛車をキレイにしてくれる」「いつも親切に話を聞いてくれる」「お店の居心地がいい」……カーディーラーが進めるVCとは少し異なるかもしれませんが、これからのカービジネスでは、こうした小さな価値を積み重ねて、つなげていくことが重要になっていくではないでしょうか。

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