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執筆者の写真平井 新一

「椅子を売ってくれない店主」から学んだ、「愛着」を売ることの大切さ。

 少し前の話ですが、インターネットで見つけた椅子に目を奪われ、地元で取り扱いがある専門店へ行ったとき、店主がこんなことを言ってくれました。

 「椅子は身体を包み、支える道具ですから、デザインだけではなく座り心地も大切です。それに椅子は単に座るだけではなく、家族と語らうための道具でもあります。だから座り心地のよい椅子でなければ、家族が集まって語らう時間がつくれないんですよね」店主は私に対してあれこれヒアリングをしてくれた上で、「確かにこの椅子はオシャレですけど、あなたにはフィットしないと思います」と言いました。もちろん、他のいろいろな椅子にも座って、感触や座り心地を比べてみましたが、「お目当ての椅子が自分に合っていない」とは思えませんでした。でも、椅子のプロである店主の目から見れば、その場の感触だけでは判断できない細やかな基準があると言うことも伝わってきました。

 見るからに「背中を押せば購入に至る客」である私に、「安易に売ろうとしない店主」……この関係性の中で私に芽生えたものは、「椅子ってそんなに奥深いのか!」という気持ち。椅子の世界とそのお店、何よりも店主の目利きのファンになってしまったんです。

 「プロとしてものを売るならば、購入後も愛着を持って使ってもらいたい。そして、お店にも愛着を持ってもらいたい」。そんな心構えでお客様と接することの大切さを学んだような気がしました。

実際、カーディーラーのトップセールスマンが商談に臨むときは、価格を入り口にした話ではなく、お客様の「家族構成」「クルマの使い方」「保管する環境」「乗り換えスパン」など、ライフスタイル全般についてお話を伺いながら、商談を進めることが多いと言います。クルマも椅子と同じように生活の中で使う道具。「お客様にフィットするかどうか?」がとても重要になるはずです。

 例えば、アウトドア好きのお客様ならクルマが汚れてしまう機会も多いでしょう。車検・点検などの来店時に洗車やコーティングをセットでご提供するようなサービスは喜んでくれるかもしれません。また、育ち盛りのお子様がいるご家族のファミリーカーなら、消臭・抗菌コーティングやルームクリーニングなどのメニューもご提案する……「こちらが売りたいもの」を売るのではなく、「お客様それぞれが必要とするもの」を考えて、おすすめすること。こうした姿勢が、長いスパンでお店の収益を支えてくれるお得意様=ファンを育てることになるのではないでしょうか。



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